女性視点
「終電、乗り遅れちゃった。」
最初に切り出したのは私。
どんな反応をするのか怖かったけど。
そしたら貴方は「なら、ボクの家においでよ。」って。
きっと、冗談だったんだと思う。
だって笑いながら言うんたんだもの。
「うん、行く。XXまで迎えにきてね。」
そう伝えると驚きながらも「わかった」と言って電話を切った。
貴方が来るまでの時間がとても長くて
後から電話で「あれは冗談だった」って言われるんじゃないかって。
しばらくして私の名を呼ぶ声が聞こえ
遠くに貴方の姿を見つけた時は、嬉しかった。
ぽつり、ぽつりと言葉を交わしながら貴方の家まで歩き
話したい事もあったけど、なかなか言葉が出ぬまま
家についてしまった。
「コーヒーでも飲む?」
「6時半には起きたいからもう寝る。」
「じゃぁ、ちょっと待ってて。」
簡易ベッドを用意してくれてたんだ。
なんで、そんなに優しいんだろ。
いつも貴方は優しくて勘違いしちゃうじゃん・・・
「いいよ、ソファーで寝る。その方が楽だし。」
いつもの悪い癖。
なんでこうも素直になれないんだろう。
「そっか。」
笑いながら言う貴方は少し残念そうな顔をした。
いたたまれなくなって
「おやすみ!!」
強い口調で言い放ち横になった。
こんな事言いたくないのに。
なんでいつもこんな調子なんだろう。
話したい事、あったのに。
背後でごそごそと布団のすれる音が聞こえた。
ごめんね。
心の中で呟い目をつぶった。
予定の時間より早く起きて、貴方に伝えたい事があるの。
テレパシーなんて本当にあるのかな。
なんて考えてるうちに眠りについた。
耳元で優しげな声が聞こてきた。
「おはよう、朝だよ。」
低くて心地いい。
ああ、貴方の声か。
何度も私を起こしてる。
最初は小さかった声が大きくなって・・・。
「起きなきゃ・・・出かけるんでしょう?」
すこし切なそうに聞こえたのは、きっと私の勝手な解釈。
「うん・・・?」
なんか聞こえたけど、夢・・・かな。
うっすら瞼に光がこもる。
もう少し、夢の続きが見たくなって
また眠りに落ちた。
なんだか、身体が揺れてるけど
それがまた心地よくて・・・・
僅かな感触と生ゆるい温もりが頬に伝わる。
悲しくなるような感じ。
でも、とても愛しい。
確かめたくて頬に手をやってみた。
これ・・・手・・・かな。
もっと触れていたくて強く握った。
「・・・XXX・・・」
この手はYYYの手だったんだね。
嬉して、でも照れくさくて笑ってしまった。
でもね
貴方が私に触れてくれるのならば
もっと好きにしていいんだよ?
本当はね、私・・・
想いを伝えたいのに、肝心なとこで言葉が出ない。
何度も口をあけるのに。
悔しくて泣きそうになった。
そしたら不意に優しく抱きしめられた。
聞こえた?
伝わった?
・・・・テレパシーはあるんだね。
私も、ずっと貴方に触れたかった。
その柔らかい髪、撫でてみたかったの。
抱きしめて、欲しかった。
「・・・XXX・・・」
どうしてそんなに切なそうな声で呼ぶの?
私、ここにいるよ。
「・・・XXX、聞こえてる?・・・起きてる・・・?」
「んん・・・?YYY・・・?」
聞こえてるよ・・・
もう少し、このままでいさせて・・・
とても、幸せなの・・・
だって、貴方の胸の中で眠れるんだもの・・・
唇に何か触れたような感覚の中
意識がゆっくり遠のいていった。
目が覚めてやっぱり夢なんだって思った。
そんな都合よくいくわけ、ないよね。
こんな私の事・・・貴方が好きになってくれる訳ない。
でも、言ったからといってどうなる訳でもない。
始発の時間が迫まり、慌てて準備をして
ろくに言葉も交わさぬまま家を出た。
「駅まで送るよ。」
貴方の優しい申し出、断った。
だって、決断が鈍るもの。
「じゃぁ、また遊びにおいで。」
「・・・そうね・・・。サヨナラ、元気でね。」
貴方は不思議そうな顔をしたけど
「うん、元気でね。」と答えてくれた。
駅までの道、涙が溢れて止まらなかった。
今、私はイタリアに居ます。
留学中なの。
多分、貴方はもう知ってると思うけど。
終電に乗り遅れたって言ったの嘘だったんだ。
あの夜、伝えたい事があって貴方に電話したの。
冗談とわかってたけど
少しでも貴方といたくて無理言ってごめんね。
貴方の優しさに素直になれなくてごめんね。
いつも強がって本当の気持ちが言えなかった。
あの夜、切り出すタイミングは沢山あったけど
全部、私が壊しちゃった。
本当はね、貴方の事が好きだったの。
宛先不明の手紙。
そっと机の引き出しにしまって鍵をかけた。
女性視点 著者:tou5