狂愛

とても大切な友人が死んだ。
自ら命を絶った。
自分で喉を掻き切ったそうだ。

発見したのは友人の恋人だった。
惨い残骸をみた恋人は狂ったそうだ。
翌年には結婚式が執り行われるはずだった。

葬式に参列した。
棺桶の中で眠っている友人は安らかな顔をしていた。
ひたすら涙を流した。

遺書はなかった。
憔悴しきった友人の親から電話があった。
何か知らないかと問われたが知らないと答えた。

婚約者は狂ったままだった。
どこかの病院に入院したそうだ。
関係のない話だ。

夢を見た。
友人が恨めしそうに凝視していた。
夢から醒めて決意した。

狂愛

友人には他人とは別の感情を持っていた。
触れたくてしょうがなかった。
抱きしめたくてしょうがなかった。

友人の事を考えるたびに勃起するのが毎日続いた。
友人の事を想いながら自慰をするのも毎日続いた。
友人の事で頭と胸が満杯でどうにかなりそうだった。

ある日友人に恋人ができた。
嬉しいのか幸せそうに笑っていた。
激しい怒りを覚えた。

毎日涙がでた。
毎日死にたかった。
一人で死ぬのは怖かった。

感情が消える事はなかった。
逆に強くなる一方だった。
友人が恋人と別れるのを強く願っていた。

家を訪ねてきた友人が結婚すると言い出した。
糸がぷつりと切れ欲望が牙を剥いた。
気づけば友人を押し倒していた。

狂おしい。貴方への愛は狂っている--

我を忘れ激しく抵抗する友人を犯した。
激情をぶつけるように腰を打ちつけ犯し続けた。
気が付けば友人は抵抗するのを諦めて泣いていた。

一言も謝らなかった。
代わりに結婚を止めろと詰め寄った。
友人は黙ったまま俯いていた。

承諾か拒絶か判断できなかった。
今度は優しく抱いた。
全身を舐めてゆっくりと挿入した。

友人は泣いて悦んだ。
快楽に溺れるように甘い声で喘いだ。
堪らなくなって唇を貪った。

友人を抱き締めたまま眠った。
目を覚ますといなかった。
酷く焦燥感にかられた。

電話もメールも反応がなかった。
テーブルを見るとメモ紙が置かれていた。
「帰る」とだけ書いてあった。

貴方を追い詰めたのは自分、でも抑えられなかった--

とても愛しい友人が死んだ。
己の喉を裂いて自ら死を選んで旅立った。
侮辱された器を捨てて魂は天へ昇った。

友人を奪ったあいつが憎かった。
狂ったと聞いた時は大笑いした。
友人と結婚しようとするからだ。

棺桶に入れられていた友人を連れて帰りたかった。
冷たい身体でも抱きたいと思った。
勃起しそうだったが無理矢理泣いて自制した。

友人の親から電話があった。
遺書もなく自殺の原因は解らないそうだ。
あの夜の事を言いたかったが勿体無いのでやめた。

嬉しくて涙がでた。
友人を奪ったあいつの人生は終わった。
今日は旨い飯が食えそうだ。

夢を見た。
俺を見つめる貴方の目には憎しみがこめられていた。
悔しいだろう。恨めしいだろう。殺したいだろう。
連れていきたいなら連れていけばいい。
貴方に誘われるのならば俺は喜んで行くから。
二人の身体をもう一度つないで貴方と俺を永遠にしよう。

終わりのない狂愛を、貴方へ--

夢から醒めて引き出しを開けた。
目当ての物を取り出し喉にあてた。
今から行くからと、躊躇いなく腕を引いた。

一人じゃないから死ぬのは怖くない。